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WETBLACK「WETBLACK」(紙ジャケットCD)

¥2,500 税込

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"和製ダンジグ"COMI。ABNORMALS活動休止から4年、わずかな沈黙を破ってあの漆黒の美声を再び世に響かせはじめた。その名もWETBLACK。結成は2021年とのことだ。

このバンドの発起人はベーシストのyan。
ドラムはMASATO。彼はCOMIと共にABNORMALSの一員であり、WRENCHやTHE SPANISH BARROW'IN GUITARでも活動している。
ギターはAOTA、様々なバンドを渡り歩き、UKダブやブレイクビーツなどを扱う良質な音楽レーベANGEL'S EGGより2枚のソロアルバムを発表している。

この四人から産み出されたサウンドは最先端にアップデートされたハードロックだ。ABNORMALSが日本のMISFITSであったとすれば当然シンガーDANZIGのソロバンドやそのルーツであるTHE DOORSを思わすサウンドになるかと思いきや、そうとも言えぬ。もちろんそれらの要素もあるしBLACK SABBATHの血と教えもしっかり受け継いではいるが、例えばメタルゴッドに君臨以前のハードなブリティッシュ・ロックバンドだった初期JUDAS PRIESTの音触りを感じさせてくれたりもする。
WETBLACKの楽曲は、ドゥーム、ストーナー、ヘヴィロックの仲間と括れるし、ヘヴィサイケデリアとも言える部分もあるが、特筆すべきは決して長尺で物語を表現せずその世界をコンパクトに密度高く収めているところだ。故に何度も聴きたくなる。また多くのSABATHクローンとは違い、重く、遅く、低い音に頼りすぎずどこか抜けのあるサウンドとなっているところも新鮮だ。更に付け加えるとしたら悪魔に頼りすぎずユーモアすら感じさせる歌詞も独自である。
これらはパンク、ハードコア、オルタナティヴを経由した「ハードロック」と言えばわかりやすいかもしれない。徹底的に「今」を感じさせる感覚でハードロックを素材に自己を表現することに成功している。おそらく確実に無意識かとは思うが、オープニングナンバー「全部くれ」にはSUEDEや(なんだったら)OASISなどのブリットポップのフィーリングがあったりするところも面白い。なんにせよパンクやミクスチャーの枠では収まりきれなかったCOMIのシンガーとしての圧倒的な表現力を思う存分発揮できる「場」がWETBLACKなのではなかろうか。

さて、私はこのWETBLACKのライブを何度か体感したことがある。安定した重心から紡ぎ出されるリズム隊のグルーヴにCOMIの伸びやかな声が乗った時の快感はもちろんのことなのだが、時にトリッキーな奏法を繰り出すAOTAのギター捌きは必見。ある日のライブではギターソロの旋律がピークのところで突然ギターを"放り投げる"という荒技を見せてくれ、驚きのあまり思わず言葉にならぬ声で絶叫してしまったほどだ。

そんな彼らの1stフルアルバム「WETBLACK」はどの曲を聴いてみても、広がる闇というよりピンポイントにどこまでも深く染み込んでいく漆黒といった魅力があり。彼らが放つ艶のある漆黒が各地のロックシーンに"染み"をつけまくり、それがいつまでも光を放ち続ける。もちろんあなたの心にも。そんな未来を想像している。

恒遠聖文(ライター)

収録曲:
1, 全部くれ
2, フィードバック
3, めまい
4, 真夜中のステップ
5, 独裁者に瓜二つ
6, 青春
7, ケムニケムニ
8, なりふりかまわず
9, 孤独の先生
10.十戒

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